絵を読むという才能。字のない絵本『あめふり』
字のない絵本は、どう読んでよいかわからずとってちょっと面倒な気がする。けれど、この本は初心者向けというか、あまり創作する必要がない。雨をテーマに、いろんな生き物が登場していくという単純なものなので、絵を説明していけば良いのだ。もちろん、常人の域を超えた壮大な物語にしてもらってもいい。
”絵を読む”という子どもたちの才能
つい最近まで、絵本を読むというのは、字を読むことだと思っていた。けれど、決してそうではない。絵本とは、絵と文があって成立するもの。特に幼い子供向けのものはどちらかというと絵がメインであって、文章はそれを補うものである。字が読めない2~3歳の子どもでも、「絵を読む」ということに非常に優れている。その能力には目を見張るものがある。字がない分、絵から理解しようとして非常に多くのものを読み取っているのだ。大人が気づかないような細部までよく見ているので、驚かされることも多々ある。しかも、その絵を自分の脳の中で発展させている。きっとこんなセリフを言っているのだろうとか、次はこんな展開になるのではないか、とか。こどもたちの想像力は果てしない。
絵のない絵本によって鍛えられる「絵を読む」能力
この「絵を読む」という素晴らしい能力。かつて私たちも備えていたはずなのに、一体どこへ行ったのやら?絵本の絵を読まなければ、その本を理解しているとはいえない。
汚れつちまつた(?)大人が鍛えるには”字のない絵本”はぴったりだ。この絵は何を表しているのだろう、この登場人物はどんな気持ちなのだろう、あれこれ考えるのは意外と楽しいものである。あぁ、子どもたちはこんな気持ちで絵本を読んでいるんだなぁと、少しばかり理解できた。絵本とはどんなことが書いてあるんだろう、と想像するから面白いんだな、と。
特に字のない絵本は正解は一つではない。けれど自分なりの答えを導き出す、クリエイティブな作業である。そんな訓練をしているうちに、絵の見方がきっと変わってくる。作者、あるいは登場人物との対話をしているような体験ができるのだ 。そんな風に絵本を楽しむことができれば、どんなことにでもワクワクできるあの頃の自分に戻れるかもしれない。
子どもたちの反応
厚手でコンパクトなので下の子(1歳)のために借りてきた。しかし気に入ったのは上の子(4歳)。
これまで何十冊と本を読んできたものの、文章のない絵本を読んだのは初めてで「なんで字がないの?」と不思議そうだった。一度読んでみると、自分も読む!と張り切り、一生懸命読んで下の子に聞かせていた。だんだんと自分なりの工夫を施すようになり、カエルのシーンではカエルの歌を入れてみたり、キノコの絵を指して「これは食べられないキノコです」と注意してみたり。創作する楽しさを学んだ様子。その後は、字がある絵本であっても、絵から見たものを私たちに必死に話してくれている。